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北海道・東北地方の迷惑防止条例と盗撮の関係まとめ

弁護士 若林翔 2019/12/24更新

先日,兵庫県で,デリヘルを自宅に呼んでスマホで盗撮したとして逮捕されたニュースが出た。

風俗トラブル,特に盗撮トラブルでは徐々に逮捕されるなど刑事事件化される事例が増えてきているようだ。

兵庫県は平成28年7月から迷惑防止条例が改正され,盗撮の範囲が拡大されている。逮捕ニュースについては以下の記事の盗撮逮捕事例のところを参照して欲しい。

デリヘルで盗撮をした客は逮捕されるか!?

風俗サービスを提供するお店側にしてみれば,盗撮が条例に違反しないとなるとお店独自のルール違反による罰金でしか盗撮に対する抑止力を発揮できなくなってしまう。

特にデリヘルなんかでは,ラブホテルや自宅に女の子を派遣するサービスであるため,常に盗撮の危険が付いて回る。

前回紹介したこちらの記事では,ビジネスホテルやラブホテルでの盗撮が全国の迷惑防止条例により処罰されるかを解説してみた。

今回は,北海道・東北地方に限定して,より詳細に盗撮と迷惑防止条例の関係を紹介してみようと思う。

各自治体の迷惑防止条例が規制している盗撮の行為と場所

まずは,どのような行為が盗撮にあたりどういった場所で盗撮をすると迷惑防止条例により処罰することができるのかを,東京都の条例を例にしておさらいしてみよう。
東京都の条例を基準にして,北海道・東北地方の条例を参照した方がより分かりやすく理解してもらえるのではないかと思っている。

規制されている行為

「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を」

「写真機その他の機器を用いて撮影し,又は」

「撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」

 

以上の行為をすると東京都の条例に抵触する。
ここで注意したいのが,「撮影」だけではなくカメラを「差し向け」かもしくは「設置」するだけでも条例違反になるのがポイントだ。

カメラを差し向けたり設置していたりすれば,仮に電源が入っていなくても規制の対象になっているかどうかは明文化されていない。

規制されている場所

「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

「公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」

 

上記の盗撮行為を,これらの場所で行うと条例違反になる。

ラブホテルやビジネスホテルが「①人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」にあたるか,それとも「②その他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所」にあたるかは,所轄の警察署によって運用が異なっているかもしれない。

仮に①か②どちらかしか規制されていないような場合には,ラブホテル・ビジネスホテルの客室は「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」として規制場所の範囲に含まれているが,かかる文言が規定されていない場合には「不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」で規制される可能性もある,という解釈も成り立ちうるところだ。

この解釈において参考になるニュースがこちらだ。

盗撮規制に「客室」明記、京都府 迷惑防止条例改正へ

京都府は21日、盗撮行為の規制対象を拡大する府迷惑防止条例の改正案を発表した。京都が世界有数の観光都市であることを踏まえ、全国で初めて規制場所に「宿泊施設の客室」との文言を明記し、盗撮行為への厳罰化を図る。
府警によると、住居や宿泊施設の客室、更衣室などのプライベートな空間であっても、裸や下着姿の人に対する盗撮を規制する。
現行の条例は、不特定多数の人が利用する「公共の場所や乗り物」と、「公衆の目に触れるような場所」での盗撮行為を処罰対象に規定。更衣室など対象外の場所で被害が発生し、課題となっていた。

引用|岩手日報デジタル版(2019.11.21)

これまではホテルなどの客室内は条文の解釈問題であったが,今回の京都府での改正案によって全国の自治体へも波及しそうだ。

東京都の盗撮に関する条例

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること
住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

(罰則)
第8条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第2条の規定に違反した者
(2) 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)
2 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(1) 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者

引用|東京都迷惑防止条例(第5条1項,2項以下略)

東京都で盗撮行為をした場合には,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金として処罰されることもポイントだ。
盗撮行為の量刑については,各都道府県毎に異なるため,以下の各条例を確認してみてほしい。

北海道・東北地方の盗撮に関する迷惑防止条例の条文まとめ一覧

✕と書いてあるのは,迷惑防止条例によってラブホテル・ビジネスホテルでの盗撮行為が規制されている自治体。
◯とあるのは,ホテル内での盗撮行為が規制されていない自治体を指す。

北海道:✕(北海道は,第2条の2第3項によりホテル内での盗撮が規制されている)
青森:◯(青森は,第6条柱書参照のとおり,ホテル内での盗撮が規制されていない)
岩手:◯(岩手は,第8条柱書参照のとおり,ホテル内での盗撮が規制されていない)
秋田:✕(秋田は,第4条2項によりホテル内での盗撮が規制されている)
宮城:✕(宮城は,第3条の2第3項によりホテル内での盗撮が規制されている)
山形:✕(山形は,第3条2項によりホテル内での盗撮が規制されている)
福島:✕(福島は,第6条3項によりホテル内での盗撮が規制されている)

北海道の条例とホテル内での盗撮の関係

では,北海道の場合はどうか。

北海道の条例では,①人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所,及び,②その他の不特定又は多数の者が利用するような場所が規制範囲となっているため,上記の解釈論を用いないまでもホテル内での盗撮は違法となる。

①は,「住居、浴場、便所、更衣室」と一緒に羅列されているため②に比べてよりプライバシー性が高い場所を規制していると解釈することもできる。
そう解釈することで②よりも①で,よりリラックスできる場所である住居に準じるような場所としてホテル内が規制されているということにもなりそうだ。

では,②はどのような場所を規制しているのか。

②の前に「集会場、事務所、教室、タクシー」と記載があるが,これらの場所はこれまでは盗撮の規制場所には含まれていなかった自治体が多い。

しかし,同僚に職場や学校の教室等で盗撮された場合にそれを処罰できる条文が存在しなかったことをきっかけに,条文に明記されるようになった。

もっとも,ラブホテルでは宿泊や休憩の際にビジネスホテルとは異なり署名することもないことが多いため,不特定多数の者が利用するような場所にあたるともいえる。結局は各自治体及び管轄の警察署によって運用が異なるためなんとも言い難いのだが,②で規制される可能性もあるということは念頭に置いてほしい。

(卑わいな行為の禁止)
第2条の2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等の上から、又は直接身体に触れること。
イ 衣服等で覆われている身体若しくは下着をのぞき見し、又は映像面に衣服等を透かして身体若しくは下着の映像を表示する機能を有する機器を使用して当該映像を見ること。
ウ ア及びイに掲げるもののほか、卑わいな言動をすること(次号に掲げる行為を除く。)。
(2) 公共の場所若しくは公共の乗物又は集会場等(集会場、事務所、教室、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所及び乗物をいい、公共の場所及び公共の乗物を除く。第4号において同じ。)にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等で覆われている身体又は下着を撮影すること(次号に規定する状態の他人に対して行う場合を除く。)。
イ アに掲げる行為をするため、写真機、ビデオカメラその他の撮影する機能を有する機器(次号及び第4号において「写真機等」という。)を向けること
(3) 住居、浴場、便所、更衣室その他の人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(以下この号及び次号において「住居等」という。)における当該状態の他人の姿態を撮影し、又はこれを撮影するため写真機等を住居等における当該状態の他人に向けること
(4) 公共の場所若しくは公共の乗物若しくは集会場等にいる者の衣服等で覆われている身体若しくは下着又は住居等における前号に規定する状態の他人の姿態を撮影するため、写真機等を設置すること。

(罰則)
第11条 第2条の2・・・に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 常習として、第2条の2・・・に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

引用|北海道迷惑防止条例

上記の場所で盗撮行為をした者は,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となり,盗撮の常習犯は量刑がより重くなる。

青森県の条例とホテル内での盗撮の関係

青森県の場合はどうか。

(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、公共の場所又は公共の乗物内において、正当な理由がないのに、他人に不安を覚えさせ、又は他人の性的羞恥心を著しく害するような次に掲げる行為をしてはならない。
一 他人の身体に直接又は衣服等の上から触ること。
二 衣服等で覆われている他人の身体若しくは下着(以下「他人の身体等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして、他人の身体等をのぞき込み、若しくは写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を設置し、若しくは他人の身体等に向けること
三 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。

引用|青森県迷惑行為等防止条例

青森県では北海道のように,人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所や,その他の不特定又は多数の者が利用するような場所が規制されていない。

そのため,公共の場所や乗物以外での盗撮行為は条例によっては規制されていないのが現状だ。

岩手県の条例とホテル内での盗撮の関係

(卑わいな行為の禁止)
第8条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を生じさせ、若しくは嫌悪の情を催させる方法で、卑わいな行為であって次に掲げるものをしてはならない。
(1) みだりに他人の胸部、臀(でん)部、下腹部等(以下「胸部等」という。)の身体の一部に触れること(着衣の上からこれらの身体の一部に触れることを含む。)。
(2) みだりに着衣で覆われている他人の下着等(胸部等の身体の一部を含む。以下同じ。)をのぞき見すること。
(3) みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影し、若しくは撮影する目的で当該下着等を撮影することができる位置に写真機等を差し出し、又は写真機等を使用して着衣で覆われている他人の身体を透視する方法により、裸体(その一部を含む。)の映像を見、若しくは撮影すること。

引用|公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例

岩手県の場合は,盗撮行為の場所を「公共の場所又は公共の乗物」に限定しているため,ホテルや職場・教室等においての盗撮が,下記に記載した秋田県での盗撮事例のように処罰されない可能性がある。

秋田県の条例とホテル内での盗撮の関係

(卑わいな行為の禁止)
第四条 何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
一 人の身体に、衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から接触し、又は直接接触すること。
二 衣服等で覆われている人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
三 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所又は乗物において、下着等を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を人に向け、若しくは設置してはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物
二 事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物
3 何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所(前項各号に掲げる場所を除く。)において当該状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を当該状態でいる人に向け、若しくは設置してはならない。

引用|公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例

秋田県の条例では,「通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所」を規制しているため,ホテル内での盗撮行為が違法となる可能性がある。

しかし,「その他の不特定又は多数の者が利用するような場所及び乗物」が規制の対象となっていないため,職場や学校の教室内での盗撮行為が処罰の対象となっていない。
具体的には,会社や学校は人の出入りが制限(監視)されていて部外者は容易に立ち入ることができないような状況となっている。
そのような状況においては,人の出入りが自由な「公共の場所又は公共の乗物」とはいえないため規制対象にはなっていないのだ。

そこで,2019年12月を目処に,秋田県議会にて迷惑防止条例の改正案が提出されるようだ。
改正の発端になったのが,秋田県の学校に勤める男性臨時講師が女性教員のスカート内を盗撮したが,条例によって処罰することができないため,立件(=「​公訴を提起する前提条件または要件が成立すること。(大辞林・三省堂)」)が見送られたというものだ。

※令和2年4月1日改正のより,「事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物」における「撮影・機器の差し向け・設置」が適用の対象となった。

 

盗撮抜け道許さない 迷惑防止条例秋田県改正へ 公共の場所範囲拡大、学校や職場も対象に

学校や職場での盗撮行為を罪に問えるようにするため、秋田県は県迷惑防止条例の改正案を県議会12月定例会に提出する。盗撮を禁止する「公共の場所」の範囲を拡大し、卑劣な行為をより徹底して取り締まる環境を整える。
現行の条例は駅や公園など「公衆が出入りできる場所」を公共の場所と定め、盗撮を禁止している。人の出入りに制限がある校舎内や職場は要件から外れ、取り締まりの対象外となっていた。
県内では4月、秋田市の秋田西中の男性臨時講師が教室で同僚女性教員のスカート内を盗撮する事案が発生。男性は別の公共施設での盗撮行為で逮捕されたが、教室での盗撮は「公共の場所」に該当しないとして立件が見送られた。
これを受けて条例の不備を指摘する声が高まっていた。県警は24日、県議会教育公安委員会で条例改正案について説明する。
盗撮行為の摘発を巡っては、宮城県も2015年3月に県迷惑防止条例を改正。住居や浴場、更衣室、トイレなど、衣服を身に着けない人がいる場所での盗撮と撮影目的でカメラを向ける行為を取り締まれるようになった。赤外線カメラによる衣服の透過撮影も禁じた。

引用|河北新報ONLINE NEWS(2019年09月21日土曜日)

 

宮城県の条例とホテル内での盗撮の関係

第三条の二 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
一 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
二 人の下着又は身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
三 人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を向け、若しくは設置すること。
四 前三号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、人の衣服等を透かして見ることのできる写真機等を用いて、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人の下着等を見、又は撮影してはならない。
3 何人も、正当な理由がないのに、住居浴場更衣室便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない 状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
4 何人も、正当な理由がないのに、集会場事務所教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所において、人の下着等を撮影してはならない。

引用|迷惑防止条例(宮城県)

宮城県の場合は,人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所や,その他の不特定又は多数の者が利用するような場所について,盗撮行為を規制している。

最近も宮城県の職員が,飲食店や勤務先の女子トレイで盗撮をしたために懲戒処分を受けた事例があった。

男性職員4人懲戒処分 盗撮やセクハラなどで停職や減給 宮城県

宮城県は22日、盗撮や女性職員にセクシャルハラスメントを行ったなどとして、男性職員4人を懲戒処分にした。

盗撮や女性職員へのセクハラで停職6カ月の処分を受けたのは、仙台地域の出先機関に勤務する主任主査級の男性職員(40)。県によると、男性職員は今年4月、仙台市内の飲食店のトイレ内盗撮目的で小型のデジタルカメラを録画状態で設置したとしている。男性職員は県迷惑行為防止条例違反の疑いで石巻区検に書類送検されたが、8月に不起訴処分(起訴猶予)となった。さらに職員は職員同士の懇親会で、女性職員に対して性的な言動を繰り返していたとしている。

また、勤務先の女子トイレに侵入して女性職員を盗撮したとして、石巻簡裁から県迷惑行為防止条例違反の罪で罰金30万円の略式命令を受けた登米地域の出先機関の男性職員(22)を停職3カ月の処分にした。

このほか女性職員にセクハラを行ったとして、農政部の課長補佐級の男性職員(49)を、県のパソコン3台を故意に壊したとして、仙台地域の出先機関の課長補佐級の男性職員(56)をそれぞれ減給10分の1(4カ月)の処分にした。

引用|産経ニュース(2019.11.22 18:20社会事件・疑惑)

飲食店のトイレは「公共の場所」にあたる。というのも,宮城県においては条例の第3条にて飲食店が「公共の場所」に含まれるということが明記されている。

(粗暴行為の禁止)
第三条 何人も、道路、公園、広場、駅、興行場、飲食店その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)

そのため,宮城県内の飲食店のトイレで盗撮行為を行った場合には,条例違反として処罰されることになるのだ。

では,勤務先の女子トイレについてはどうか。
勤務先は,入り口に鍵をかけて人の出入りを制限しているため通常であれば部外者はオフィス内に入ることができない。そうすると,不特定多数の者が利用する場所とはいえないため,「公共の場所」にはあたらないといえる。

また,職場では衣服を着用するのが一般常識でもあるため,「人が通常衣服の全部又は一部を着けない 状態でいるような場所」にもあたらない。

もっとも,トイレ内は「住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない 状態でいるような場所」に該当するといえるため第3条の2第3項によって規制の対象になっている。

ここで問題になるのが,会社などのオフィスは「集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所」にあたるが,オフィス内のトイレは「住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない 状態でいるような場所」にあたるという点だ。
この問題に関してはこちらの警視庁の迷惑防止条例に関する案内が参考になる。

山形県の条例とホテル内での盗撮の関係

(卑わいな行為の禁止)
第3条 何人も、公共の場所等又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
(2) 衣服等で覆われている人の下着又は身体をのぞき見し、又は撮影すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、公衆が利用することができる浴場便所更衣場その他公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所において当該状態でいる人の姿態をのぞき見し、又は撮影してはならない。

引用|山形県迷惑行為防止条例

山梨県の場合は他県に比べて条文自体が短いのが特徴だ。
そして,「公衆が利用することができる浴場、便所、更衣場その他公衆が 通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所」は規制されているが,宮城県のように「集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所」等は規制されていない。

そうすると,ホテル内は一応盗撮行為の規制場所になっているともいえるが,一方で会社や学校の教室は改正の対象になっていない。そこで,条例の改正情報がないか調べてみたところ,こちらの記事が見つかった。(内容全てを閲覧するには有料会員にならないとダメなようだが)

記事の内容を一切確認できないため,タイトルからしかその内容を推測することはできないが,どうやら会社や学校も規制の対象に入るようだ。
ただし,この改正が果たして山梨県の条例を指しているのかは定かではない。あくまで,山梨日日新聞電子版というメディアが載せるのは山梨のローカル情報だろうから,この条例改正は山梨県のことだろうという推測にすぎない。

福島県の条例とホテル内での盗撮の関係

(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、公共の場所又は公共の乗物における他人に対し、みだりに、著しい羞恥心又は不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
一 着衣等の上から、又は直接他人の身体に触れること。
二 着衣等で覆われている他人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見し、又は撮影すること。
三 その他卑わいな言動をすること。
2 何人も、公共の場所又は公共の乗物における他人に対し、みだりに、写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を使用して着衣で覆われている他人の身体を透視する方法により、裸体(その一部を含む。以下この項において同じ。)の映像を見、又は裸体を撮影してはならない。
3 何人も、みだりに、住居浴場更衣室便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において、当該状態でいる他人の姿をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
4 何人も、みだりに、集会場事務所教室貸切バスその他特定かつ多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
(平二九条例五七・一部改正)

引用|福島県迷惑行為等防止条例(リンク先の「例規集」参照)

福島県の場合は,盗撮行為を規制する場所が必要かつ十分に明記されているため,もしホテル内などで盗撮された場合には警察に通報することで取り締まってもらえるかもしれない。

他県と異なるところがあまりないため,特筆すべきことはなさそうだ。

最後に

参照用に条文を引用しているため,文章量が多くなってしまったが風俗店経営者やキャストのためになる記事が書けたと思う。

今後も全国の条例を紹介していく予定なので,他の記事も是非チェックしてほしい。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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