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健康増進法の喫煙可能室は既得権化し値上がりする!?

弁護士 若林翔 2020/03/15更新

2020年4月1日から、改正健康増進法施行され、様々な施設の喫煙が大幅に規制されます。

キャバクラ・ホストクラブなどの水商売飲食店も規制の対象となり、原則喫煙が禁止となります。

また、これにともない、各都道府県の受動喫煙防止条例も改正されつつあります。

東京では、健康増進法よりも上乗せをする厳しい受動喫煙防止条例が施行されます。

改正後の健康増進法、各都道府県の受動喫煙防止条例では、おおまかに、以下の4つの喫煙可能類型を定めています。

・喫煙専用室

・加熱式たばこ専用喫煙専用室

・喫煙目的室

・喫煙可能室

詳細についは、健康増進法と受動喫煙防止条例の全体像をまとめた以下の記事を参照ください。

健康増進法・東京都の受動喫煙防止条例改正で飲食店は原則禁煙!? キャバクラ、ホストクラブ等の水商売,飲食店のタバコ事情はどう変わる?

 

また、前回の記事では、キャバクラやホストクラブを含めた飲食店が、シガーバーと同様の喫煙目的室の要件を備えることによって、喫煙可能な店になることについて,説明しました。

飲食店原則禁煙逃れで喫煙目的施設利用か「シガーバーなら喫煙OK?」

 

そして、今回の記事では、健康増進法上の喫煙可能室の要件、各都道府県条例が喫煙可能室に求める要件、喫煙可能室の届出の仕方などを説明します。

 

動画でも説明してるので,こちらもご参照くださいな。

健康増進法の喫煙可能室は既得権化するのか!?

デリヘル等の性風俗の分野では、風営法が改正され、改正前の風俗店以外の箱ヘル等の店舗型の風俗店の新規出店がかなり厳しく制限されました。

この際、既得権があった既存店舗について法人で届出を出していた店舗は、その後の市場価値があがり、高値で取引されるようになったとか。

同じようなことが、健康増進法の喫煙可能室でも起こる可能性があります。

その際、喫煙可能室の届出名義を法人にすべきです!

なぜなら、風営法のように、一代限りの既得権となると、個人で届出を出していた場合には、適法に譲渡・売却ができなくなるからです。

法人であれば、法人の株式を譲渡することにより、法人自体は変更しないまま、法人の実質的な支配者・所有者を変更することが可能になるからです。

 

健康増進法の喫煙可能室とは

喫煙可能室とは、店舗の全部又は一部の場所であって、その構造及び設備がその室外の場所へのたばこの煙の流出を防止するための厚生労働省令が定める技術的基準に適合し、喫煙が可能であると店舗管理権原者から指定された場所をいいます。

健康増進法の改正により、複数の人が利用する屋内での喫煙は原則禁止になりました。

しかし、いきなり屋内禁煙とすると、これまで喫煙者の固定客がついていたような中小の居酒屋は客を失うことになり、経営が立ち行かなくなるという意見がありました。

そこで、健康増進法は、暫定措置として、既存特定飲食提供施設に限っては、喫煙可能室を設置することができるようにしました(健康増進法附則2条1項により、健康増進法33条など、喫煙専用室の規定が読み替えられます。)。

喫煙可能室では従前同様たばこ全般を吸うことが可能です。

また、喫煙可能室内では飲食も可能です。主食を提供していても、喫煙可能室は設置可能です。

 

健康増進法上の喫煙可能室の要件

健康増進法上の喫煙可能室には、以下の3つの要件が必要です。

1 既存特定飲食提供施設

2 技術的基準

3 標識の設置等

以下、それぞれについて、見ていきましょう!

 

1 既存特定飲食提供施設

健康増進法上では、以下の要件に該当する店舗が、既存特定飲食提供施設となります(健康増進法附則2条2項1号、2号)。

⑴ 令和2年4月1日時点で営業していること

⑵ 資本金5000万円以下であること

既存特定可能施設となろうとする会社が資本金5000万円以下であっても、この会社を支配している株主が資本金5000万円以上であった場合は、この要件を満たしたことになりません。具体的には以下の通りです。

⑶ 客席面積100平方メートル以下であること

 

2 技術的基準

また、喫煙可能室内では、喫煙が可能となるため、同法共通の要件として、煙が外部に漏れないような設備になっている必要があります(これを技術的基準といいます。健康増進法附則2条1項、健康増進法33条1項)。

技術的基準は、厚生労働省令(厚生労働省が定める命令)である健康増進法施行規則により定められています。技術的基準は、以下の通りです。

⑴ 出入り口において室外から室内に流入する空気の気流が0.2メートル毎秒以上であること

(健康増進法施行規則16条1項1号)

外側に空気が漏れすぎないような構造になっているかという意味です。

⑵ たばこの煙(蒸気を含む。以下この条……において同じ)が室内から室外に流失しないよう、壁、天井等によって区画されていること

(健康増進法施行規則16条1項2号)

禁煙のスペースと喫煙スペースが完全に分離されていなければならないという意味です。パーテーションで区切って上や下に隙間がある場合などは、この要件に該当しません。

⑶ たばこの煙が屋外又は外部の場所に廃棄されていること

(健康増進法施行規則16条1項2号)

 

3 標識の設置等

喫煙可能室を設置した場合は、出入り口に標識をはらなくてはいけません。

また、喫煙可能室内は、20歳未満は立入禁止になります。

 

東京都受動喫煙防止条例の上乗せ

東京都は、健康増進法上の既存徳的飲食提供施設よりも要件を上乗せしています(都指定飲食提供施設といいます。東京都受動喫煙防止条例附則3条)。

都条例では、健康増進法上の要件を満たすことのほかに、従業員がいないことを要件にしています(東京都受動喫煙防止条例附則3条2項)。

従業員とは労働基準法9条に規定する労働者です。

労働基準法9条の労働者とは。「職業の種類を問わず、事業又は事務所」「で使用される者で、賃金を支払われる者」をいいます。

ただし、都条例附則3条かっこ書きで同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用されるもの及び家事使用人を従業員から除いています。

したがって、店員さんが家族のみ(たとえば夫婦でやっているようなお店)の場合、従業員はいないことになります。

 

東京以外の都道府県の受動喫煙防止条例の概要

東京都以外の都道府県の受動喫煙防止条例について、以下の3種類に分けて、概要を説明します。

・受動喫煙防止条例が未制定

・健康増進法と同内容の受動喫煙防止条例

・健康増進法に上乗せしている受動喫煙防止条例

 

受動喫煙防止条例未制定の都道府県

北海道等、上記地図の灰色の都道府県は受動喫煙防止条例が未制定の都道府県です。

当法律事務所内でインターネット検索等で調査したのですが、もし、間違いがありましたら、訂正いたしますのでご指摘いただけたら幸いです。

そもそも条例がない場合、法律は原則として日本全国で適用されるため、健康増進法の要件がそのまま適用されます。

 

受動喫煙防止条例が健康増進法と同様の都道府県

条例がある場合でも、健康増進法と同様の規定を置いている場合があります(神奈川県受動喫煙防止王令9条、16条など)。

また、条例がある場合であっても、健康増進法上の既存特定飲食提供施設、喫煙可能室の規定を置かない場合もあります(広島県がん対策推進条例など)。

これらの場合、条例に規定がある場合は、条例の規定に従うことになりますが、対応は変わりません。そもそも条例に規定がない場合は、健康増進法の要件に従うことになります。

ただし、同様の規定を置いている場合は、条例制定時に営業していることが要件となっている場合があるので、いつの時点で営業しているかは注意が必要です。

 

受動喫煙防止条例が健康増進法に上乗せされている都道府県

⑴ 東京都と同様の上乗せがされている場合

東京都と同様、従業員がいる場合に喫煙可能室を設置できないという規定を置いている場合です。

従業員の考え方は東京都と同様です。

東京都と同様の規定を置く県は、秋田県(秋田県受動喫煙防止条例9条)です。

ただし、秋田県の場合、条例公布から5年間は従業員がいる店舗での禁煙は、努力義務(違反しても罰則等の制裁がない義務)とされています(秋田県受動喫煙防止条例附則3項)。

また、県ではないですが、千葉市は市で条例を制定して、東京都と同様の規定を置いています(千葉市受動喫煙防止条例5条)。

 

⑵ 大阪府の規制

大阪府では、従業員のいる店舗では面積の大小にかかわらず禁煙とすべき努力義務が課されています。

また、面積の要件が健康増進法よりも重くなっています。

大阪府では、30平方メートル以下の店舗が府指定飲食提供施設となり、喫煙可能室が設置可能です。

 

⑶ 埼玉県・岡山県の場合

以上の県は条例の制定を準備中です。さらに、健康増進法よりも要件を上乗せするこが検討されています。

埼玉県は東京都同様従業員のいる店舗を禁煙とする条例の制定を準備しています。ただし、書面ですべての従業員が同意した場合は、喫煙可能室を設置できるようにする規定も置かれる予定です。

岡山県では、従業員がいる店舗では禁煙とする努力義務が課す条例の制定を準備中です。

 

健康増進法での喫煙可能室の届出の仕方

健康増進法は、喫煙可能室を設置した場合に喫煙可能室の管理権限者の住所地の党道府県知事に届け出をしなけれなばならないとしています(健康増進法附則2条6項)。

届け出るべき事項は、

①喫煙可能室を設置した施設の名称及び所在地

②管理権限者の住所

です。

届出書類は各都道府県(自治体)のホームページに用意されています。

参考
・東京都千代田区(都条例による上乗せあり)
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kenko/kenko/judokitsuen/kitsuenkanoshitsutodokede.html

・神奈川県横浜市(県条例あり、上乗せなし)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/kenkozukuri/tabako-health/taisaku/kizontokutei.html

・愛知県(条例なし)
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000024729.html

 

喫煙可能室についてのまとめ

今回は、喫煙可能室を設置できる既存特定飲食提供施設についてみてきました。まとめると以下のようになります。

① 既存特定飲食提供施設になれるのは、法律(条例)施行時点で営業している中小の飲食店

② 喫煙可能室では、飲食可能

③ 都道府県によっては要件が上乗せされている。都道府県条例がない場合でも市町村が独自の条例をおいて要件を上乗せしている場合がある。

④ 喫煙可能室を設置した場合、都道府県知事に届け出なくてはならない。

⑤ 経過措置なので、いずれ禁煙になる可能性がある。

 

ここまで読んでくださりありがとうございました。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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