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絶対に逮捕されないための違法なライブチャットか判断する基礎知識

弁護士 若林翔 2022/09/09更新

FC2ライブなどのアダルトなライブチャットの配信者やチャットレディーは違法なのか?

逮捕されるのか?

 

以下のニュースでは,FC2ライブの配信者が以下の3つの犯罪で逮捕され,捜査中だ。

公然わいせつ罪
職業安定法違反
風営法違反

なお,チャットレディーをしていた女性は公然わいせつ罪逮捕されている。

 

 

まずは,ニュースをみてみよう。

ライブチャット配信者が逮捕されたニュース

わいせつ生中継で荒稼ぎ、出演勧誘容疑で31歳男を再逮捕へ 異例の風営法適用も
2019.8.13 12:03

動画配信サイト「FC2ライブ」で女性のわいせつ行為を生中継したとして、今年7月男女2人が逮捕される事件があり、兵庫県警は13日にも、職業安定法違反の疑いで、兵庫県姫路市の自営業、○○容疑者(31)を再逮捕する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。○○容疑者は女性19人を出演させて2000万円超を荒稼ぎしていたとみられる。県警は映像送信型の違法風俗営業に当たるとみて、風営法違反容疑でも捜査摘発されれば全国的にも異例という。
これまでの調べでは、容疑者は5月下旬、無職女(20)がわいせつな行為をしている映像をFC2ライブで生中継。県警は7月22日に○○容疑者と女を公然わいせつの疑いで逮捕した。
捜査関係者によると、○○容疑者はこの女を含む若い女性19人と出会い系サイトなどで知り合い、わいせつ動画出演を勧誘。同県明石市内のマンション一室などでわいせつな行為をさせてFC2で生中継し、今年7月までの約2年間で課金収入2000万円超を得たとみられる。出演女性には課金収入の25~40%程度が報酬として○○容疑者から支払われていた。
県警は○○容疑者が公安委員会に「映像送信型性風俗特殊営業」の届け出を怠ったまま、女性のわいせつ行為を動画配信した疑いもあるとみて捜査している。

https://www.sankei.com/affairs/news/190813/afr1908130005-n1.html

 

このように,今回の事件では,最初にライブ配信者とチャットレディーが公然わいせつ罪で逮捕されている。

そして,8月13日,ライブ配信者が職業安定法違反で逮捕されている。

さらに,このライブ配信者について,現在風営法違反で捜査中とのことだ。

 

以下,それぞれの罪の該当性を見ていこう。

 

ライブチャットと公然わいせつ罪について

まずは,公然わいせつ罪について。

刑法では,以下のように定めている。

(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

「公然」とは不特定または多数の人が認識することができる状態をいう。現実に不特定または多数の人間に認識されたことまでは不要とされている。

ネット上で,不特定多数に公開されているライブチャット(仮に有料会員に制限されていたとしても,不特定だろうし,多数といえるだろう。)での配信は,「公然」といえるだろう。

問題は,「わいせつ」と言えるかだ。

「わいせつ」とは「いたずらに性欲を興奮・刺激させ,正常な性的羞恥心を害し,善良の性的道義観念に反するもの」と定義されている。分かりにくく,幅の広そうな定義にしているのは,時代の変化に対応するためなのかな。

ざっくりと言えば,現在の警察等の捜査実務においては,無修正性器が出ているものを「わいせつ」としていると言って間違いではないだろう。

なお,このわいせつ性については,風俗での盗撮事犯において,盗撮動画等を販売するなど流出させた際の罪名,わいせつ電磁的記録に関する罪の解説でも触れているので,こちらも参照してほしい。

デリヘル等の風俗で盗撮をした客は逮捕されるか!?

 

要するに…

無修正で,性器が映っている動画を配信したら公然わいせつ罪にあたり逮捕される可能性がある!

 

ライブチャットと職業安定法について

次に,職業安定法(以下,「職安法」という。)についてだ。

今回の事件のニュースでは,職安法のどの罪にあたるかなどの詳細は書かれていないが,「出会い系サイトなどで知り合い、わいせつ動画出演を勧誘」と記載されいてるため,有害業務の募集と考えられる。

職安法では,以下のように定めている。

《職業安定法63条》

次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
2号 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

「有害な業務」とは,社会一般の道徳観念に反する業務をいい,労働者保護,善良な風俗の保護という観点から,判断される。

風営法に基づく届出を出して,適法に営業しているデリヘル等の性風俗店について,この「有害な業務」に該当するという判例がある。

その基準に基づいて考えるならば,アダルトなライブチャットも「有害な業務」に該当する可能性が高いだろう。本件のように,無修正の性器をさらすような動画の配信であれば,より「有害な業務」といえるだろう。

職安法の有害業務については,以下の記事で判例を引用しつつ詳しく解説をしているので参照してほしい。

性風俗店は「有害な業務」(職業安定法)か!? スカウト・風俗店逮捕事例・判例を弁護士が解説!

 

ライブチャットと風営法違反について

本件は風営法違反でも捜査中という。そして,摘発されれば全国的にも異例だと。たしかに,過去の例でもライブチャット営業が風営法違反で逮捕・摘発された話は聞かない。有名な帽子君の事件でも公然わいせつ罪と職安法違反で摘発されてはいたが,風営法違反の罪には問われていなかったはずだ。

結論から言うと,アダルトライブチャットは,風営法が定める「映像送信型性風俗特殊営業」にあたるため,届出が必要だ。そうであるにも関わらず,この届出を出していないということで,無届営業の罪になるという理屈だろう。

「映像送信型性風俗特殊営業」とは、専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く。)により営むものをいう。

アダルトライブチャットは,どう考えても映像送信型性風俗特殊営業にあたるだろう。

風営法の映像送信型性風俗特殊営業については、以下の記事を参照してほしい。

映像送信型性風俗特殊営業と風営法・ライブチャット事業の注意点

この無届営業の罰則は,6ヶ月以下の懲役100万円以下の罰金だ。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
(用語の意義)
第二条
8 この法律において「映像送信型性風俗特殊営業」とは、専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く。)により営むものをいう。

第三款 映像送信型性風俗特殊営業の規制等
(営業等の届出)
第三十一条の七 映像送信型性風俗特殊営業を営もうとする者は、事務所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 当該営業につき広告又は宣伝をする場合に当該営業を示すものとして使用する呼称
三 事務所の所在地
四 第二条第八項に規定する映像の伝達の用に供する電気通信設備(自動公衆送信装置(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第九号の五イに規定する自動公衆送信装置をいう。以下同じ。)を用いる場合にあつては自動公衆送信装置のうち当該映像の伝達の用に供する部分をいい、電気通信回線の部分を除く。次条において「映像伝達用設備」という。)を識別するための電話番号その他これに類する記号であつて、当該映像を伝達する際に用いるもの
五 前号に規定する場合における自動公衆送信装置が他の者の設置するものである場合にあつては、当該自動公衆送信装置の設置者の氏名又は名称及び住所
2 第三十一条の二第二項から第五項まで(第四項ただし書を除く。)の規定は、前項の規定による届出書の提出について準用する。この場合において、同条第二項中「同項各号(第四号を除く。)」とあるのは「第三十一条の七第一項各号」と、同条第三項中「前二項」とあるのは「第三十一条の七第一項又は同条第二項において準用する前項」と、同条第四項中「第一項又は第二項」とあるのは「第三十一条の七第一項又は同条第二項において準用する第二項」と読み替えるものとする。

第五十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
四 第二十七条第一項、第三十一条の二第一項、第三十一条の七第一項、第三十一条の十二第一項又は第三十一条の十七第一項の届出書を提出しないで性風俗関連特殊営業を営んだ者
五 前号に規定する届出書又はこれらの届出書に係る第二十七条第三項(第三十一条の十二第二項において準用する場合を含む。)若しくは第三十一条の二第三項(第三十一条の七第二項及び第三十一条の十七第二項において準用する場合を含む。)の添付書類であつて虚偽の記載のあるものを提出した者

なお,通常のデリヘル等の風俗店の無届営業については,以下の記事を参照してほしい。

デリヘル等性風俗店の無届営業について

 

映像送信型性風俗特殊営業についての風営法の解釈運用基準

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準についての通達から,映像送信型性風俗特殊営業についての記載を以下,引用する。

第7 映像送信型性風俗特殊営業の定義について(法第2条第8項関係)

1 総説

映像送信型性風俗特殊営業には、客に「性的な行為を表す場面又は衣服を脱い だ人の姿態の映像」を見せる営業のうち、これらの映像を「専ら」見せるもので あって、かつ、客の「性的好奇心をそそるため」見せるものがこれに当たること となる。

2 「性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像」の該当性の判断

(1) 「性的な行為を表す場面」とは、自慰行為、性交、性交類似行為等を行って いる人の様子や光景のことをいう。「衣服を脱いだ人の姿態」の意義については、第5中3(4)を参照すること。

(2) 「映像」とは、静止映像のほか、ビデオの映像のような「動く映像(動画)」もこれに含まれる。

3 「専ら」の該当性の判断

(1)「専ら」の意義については、第5中3(2)を参照すること。「専ら」に該当す るかどうかは、営業を営む者の意図及び営業の実態を踏まえて判断することと なる。

(2) ホームページの中を幾つかのセクションに分割し、そのうちの一部で性的な 行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せている場合については、 当該セクションについて別料金を設定しているなどの事情が認められる場合を除き、ホームページ全体を通じて「専ら」当該映像を見せているかどうかを判断することとなる。

4 「性的好奇心をそそるため」の該当性の判断

(1) 「性的好奇心をそそるため」の意義については、第5中3(3)を参照するこ と。

(2) 青少年保護育成条例等を制定している都道府県においては、著しく性的感情 を刺激し、少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書を有害図書として個 別に知事が指定し、その販売等を規制しているが、多くの条例においては、更 に一定の図書を包括的に有害図書とする制度を設けており、その基準として、 図書については、全体の2割が次の内容であることを規定している例が多くみ られる。

そこで、一般的には、客に見せる映像の中に次の映像がおおむね2割以上含 まれている場合には、「性的好奇心をそそるため」のものであると評価するこ とができると解される。

1 衣服を脱いだ人の姿態で、次に掲げるもの

(i) 大腿部を開いた姿態
(ii) 陰部、臀部又は胸部を誇示した姿態 (iii) 自慰の姿態
(iv) 排泄の姿態
(v) 愛撫の姿態又はこれを連想させる姿態 (vi) 緊縛の姿態

2 性的な行為を表す場面で、次に掲げるもの (i) 男女間の性交又は性交を連想させる行為 (ii) 強姦、輪姦その他のりょう辱行為
(iii) 性交類似行為

(iv) 変態性欲に基づく性行為

5 電気通信設備の意義

「電気通信設備」とは、電気通信(有線、無線その他の電磁的方法により、符 号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。)を行うための機械、 器具、線路その他の電気的設備をいう。

6 放送の意義 「放送」とは、公衆によって同一の内容の送信が直接、かつ、同時に受信され

ることを目的として行う無線通信の送信をいい、「有線放送」とは、公衆によっ て同一の内容の送信が直接、かつ、同時に受信されることを目的として行う有線 電気通信の送信をいう。したがって、一般のテレビジョン放送、ケーブルテレビ等は、法第2条第8項の対象とはならない。

7 バナー広告の依頼者の客に映像を伝達する形態のもの

バナー広告(インターネットのホームページ等に設けられた横断幕状の映像で あって、広告の内容を表示するとともに、当該広告の部分をクリックすることに より、当該広告の広告主が希望するホームページに自動的にアクセスすることが できるようにしているものをいう。)を表示すること等により広告収入を得て、 当該バナー広告を依頼した者の客となるべき者に映像を伝達する形態のものは、 映像送信型性風俗特殊営業に当たらない。

風営法解釈運用基準のリンク

 

判例:アダルトライブチャットの公然わいせつ,職業安定法違反被告事件

アダルトライブチャット運営で逮捕された場合,実際にどのような罪になるのだろうか。

その量刑の参考として,1つ,裁判例を紹介する。公然わいせつと職安法違反で逮捕・起訴された事案だ。

大阪地方裁判所判決平成29年9月13日

《主文》

被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の全部の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

《罪となるべき事実》

被告人は,

第1 A及びBと共謀の上,平成29年5月21日午後3時54分頃,大阪市浪速区(以下略)「□□」503号室において,ライブ配信サイト「△△」の映像配信システムを利用して,電気通信回線を介し,Bがウェブカメラで露骨に撮影したBの陰部自慰行為等の映像をインターネット上に即時配信して不特定多数の視聴者に閲覧させ,もって公然とわいせつな行為をした

第2 ライブ配信サイト「△△」の映像配信システムを利用して,電気通信回線を介し,自己が雇用する女性出演者に,陰部を露骨に露出した映像等をインターネット上に即時配信させて不特定多数の視聴者に閲覧させていたものであるが,Aと共謀の上,雇い入れた女性出演者に,陰部を露骨に露出した映像等をインターネット上に即時配信する業務に就かせる目的で

1 平成28年11月11日頃から同月18日までの間,大阪府内又はその周辺において,Aが,C(当時17歳)に対し,ソーシャルネットワークサービスを利用して,「1日10万近く稼げる。男の人に一切触ることもないし性病にならないので安全と思う。風俗とかより断然いい。セックスとかで稼ぐよりはるかにまし。」旨のメッセージを送信するとともに,同月18日,前記「□□」503号室において,Aが,Cと面接して,前記出演者として稼働するようCを勧誘し,

2 平成28年11月12日頃から平成29年2月4日までの間,大阪府内又はその周辺において,被告人が,D(当時21歳)に対し,ソーシャルネットワークサービスを使用して,「お給料は1時間あたり1万円です。上手に振る舞えば間違いなく風俗より稼げます。」旨のメッセージを送信するとともに,同月4日,前記「□□」503号室において,Aが,Dと面接して,前記出演者として稼働するようDを勧誘し,

もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,それぞれ労働者の募集を行った。

《量刑の理由》

被告人は,インターネット上の映像配信システムを利用して,パフォーマーと呼ばれる女性出演者によるわいせつ映像を配信することにより,多額の売上げを得る目的で,判示第1の犯行を行うとともに,女性出演者の確保のために判示第2の各犯行を行った。いずれも,常習的かつ職業的な犯行である。

公然わいせつの点についてみると,被告人は,共犯者らと共謀して,多数の者が閲覧し得るインターネット上の配信サイトにおいて無修正のわいせつ映像を配信し,社会に拡散させたものであり,健全な性的秩序を害した程度は小さくない

また,職業安定法違反の罪についてみると,被告人は,わいせつ映像の配信による利益を得るために女性出演者を確保することが必要不可欠であったことから,共犯者と共謀の上,ソーシャルネットワークサービスを用いて18歳未満の者を含む複数の若い女性に接触し,怪しい仕事だと思われないよう言葉巧みに女性を誘い,配信設備のある場所に来させてから,わいせつ映像の配信を含む業務内容を具体的に説明するなどして女性を勧誘したものであって,その犯行態様は巧妙かつ悪質である。

以上に,被告人が本件各犯行を主導したものであることも考慮すると,その刑事責任を軽視することはできないが,他方で,判示第1の犯行については有料での配信行為であって視聴者が限定されていたこと,被告人は一貫して本件各犯行を認め,一応は反省の態度を示していること,前科がないことなど,被告人にとって酌むべき事情が認められる。そこで,被告人に対しては,主文の刑を定めた上で,今回に限りその刑の全部の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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