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風俗トラブル裁判例〜風俗での盗撮の示談書の効果は!?〜

19/07/28更新

盗撮本番といった風俗トラブルでは,裁判をせずに当事者間の示談で解決することが多い

風俗店側としても,トラブルになった客側としても,事を荒立てたくないと考えることが多いからだろう。

そのため,風俗トラブルについての裁判例は極めて少ないのだ。

今回は,その珍しい裁判例についてご紹介しよう。

ざっくり要約すると,店が盗撮客に100万の示談書書かせて20万支払わせて,残金80万を裁判で請求したんだけど,示談書が脅迫によるものとして無効になり,店は客に20万円返せよって判決が出てしまった事案だ。

なお,店側が恐喝罪で逮捕されてしまった事例など,その他の風俗トラブルについては以下のページを参照してほしい。

風俗トラブルの記事まとめ!盗撮・本番,逮捕,罰金・損害賠償請求,示談など

風俗トラブルの裁判例の事案の概要と結論の要旨

《事案の概要》

客が風俗店を利用した際に携帯電話で盗撮をしてしまったという風俗トラブル事案

その風俗店には,「盗撮等の発見時に迷惑料が発生する」旨の掲示があった。

盗撮発覚後,慰謝料・迷惑料名目で合計金100万円を払う旨の示談をし,示談書を作成した。

客は風俗店に対して,100万円のうち20万円を支払った。

客は弁護士に相談し,残金80万の支払いを拒否したため,店側は残金80万円を求める訴訟を提起した。

客は,その訴訟において,すでに支払っていた20万円の返金を求める反訴を提起した。

《判決概要》

店の請求を棄却し,客の20万の請求を認容した。

示談書は脅迫により書かされたものであり取り消され,無効

《脅迫と認定された理由》

本件店舗閉店後である午後11時30分ころまで(サービス開始は午後10時頃)、容易に外に出られない本件スペースに被告を留まらせたこと

携帯電話等の所持品を原告が預かった状況下で交渉したこと。

客が風俗店側に対し、「100万円は高くないですか。」などと述べて抵抗したが、風俗店側が払わないなら家に帰さないなどと述べ、また、携帯電話等の所持品を返してもらっていなかったため、やむなく示談書を作成することとなったこと。

本件撮影行為に関して執拗に100万円の賠償を求め、20万円の即時支払を求めたこと。

裁判例の解説,慰謝料・損害賠償等を請求する際の注意点

う〜ん,なんともいえない裁判例…

風俗で盗撮した客に,風俗店の事務所スペースで20分ちょい交渉して,示談書書かせたらそれが脅迫って…

風俗店側が携帯等を預かっていて,「払わないなら家に帰さない」ってところはやりすぎだとは思うけども。。。

店側からみると厳しい裁判例だな。

原告が風俗店の経営会社ではなく,働いている女性キャストだったなら話は違っていたのかも。

なお,当事務所の弁護士が風俗店側の代理人として,盗撮をした客に対して損害賠償請求をした裁判では,客と風俗店側が交渉を始めるところから最後に示談書を書くところまで全て録画をしてあった事案で,請求金額100万円満額の和解で終了した。

以下の記事でも書いたが,風俗店が風俗トラブルについて客と交渉する際には,脅迫だ,恐喝だ,と言われないよう,必ず録音・録画をしておくべきだろう。

デリヘル等の風俗で盗撮被害にあった場合の損害賠償・示談・示談書について

裁判例

東京地判平成29年02月28日

《主文》
1 本訴原告(反訴被告)の請求を棄却する。
2 本訴原告(反訴被告)は、本訴被告(反訴原告)に対し、20万円及びこれに対する平成27年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、本訴原告(反訴被告)の負担とする。
4 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

《事実及び理由》
第1 請求
1 本訴事件
本訴被告(反訴原告。以下「被告」という。)は、本訴原告(反訴被告)(以下「原告」という。)に対し、80万円及びこれに対する平成27年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 反訴事件
主文2項同旨

第2 事案の概要
本訴事件は、性風俗店を経営する原告が、被告に対し、被告が後記本件撮影行為を行ったため、原告被告間で迷惑料100万円の支払を合意したとして(後記本件合意)、後記本件合意に基づく残元金80万円及びこれに対する弁済期翌日である平成27年7月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であり、被告は後記本件合意の強迫に基づく取消し(民法96条1項)及び公序良俗違反による無効を主張している。
反訴事件は、被告が、上記のとおり後記本件合意が取消し又は公序良俗違反により無効であると主張して、原告に対し、不当利得返還請求権に基づき、既払金20万円及びこれに対する当該支払日の翌日である同月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による民法704条前段の法定利息の支払を求める事案である。

(略)

第3 当裁判所の判断
1 本件示談書作成前後の事実経過
(1) 被告が本件示談書を作成した事実は当事者間に争いがないところ、前記第2の1の前提となる事実、証拠(甲1ないし3の1、10、19、乙3、原告代表者本人、被告本人。但し、以下の各認定に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
ア 本件サービスを被告が受けた当時、本件店舗の入り口には「盗撮、盗聴一切禁止です。→発見時迷惑料が発生します。」との記載した掲示はあったが、迷惑料が100万円である等の具体的な金額に関する記載はなく、本件店舗店員から口頭で説明を受けたこともなかった
イ 被告は、店員に対し携帯電話、時計等所持品を預けたが、本件サービス時、ジャケットに入っていた携帯電話を利用して本件撮影行為を行った
ウ 平成27年7月9日午後10時半ころ、被告が本件サービスを受けた後、被告は本件店舗受付付近で原告代表者から呼び止められた。その後、原告代表者が金属探知機による確認等を行ったことにより、被告の携帯電話の所持が発覚した。
エ 上記発覚後、被告は、原告代表者の指示に従い、本件店舗内の受付背後のトイレ・洗面所裏側にあるスペースに行った(以下「本件スペース」という。)。
本件スペースは、角の二方を壁に仕切られ、一方はトイレ・洗面所に面し、一方には事務机がおかれていた。被告は本件スペースのおおよそ中心の丸椅子に座り、原告代表者と事務机を挟んで向かい合っていた。本件スペースからの出入りには、上記トイレ・洗面所と事務机の間を通ることを要し、また、本件スペースからは本件店舗受付を通らないと店舗の外に出られなかった。
オ 被告は、本件スペースにおいて、原告代表者に対し何度も謝罪したが、原告代表者からは「謝られても話が進まない。金で解決するしかない。」などといわれ、少なくとも約20分ほど、原告代表者が用意していた示談書のひな形(迷惑料として規定通り100万円の支払う旨を内容とするもの)を示されながら、執拗に迷惑金として100万円の支払を要求された。被告は原告代表者に対し、「100万円は高くないですか。」などと述べて抵抗したが、原告代表者が払わないなら家に帰さないなどと述べ、また、携帯電話等の所持品を返してもらっていなかったため、やむなく示談書を作成することとした。
カ 原告代表者は、被告に対し、当初、少なくとも20万円を即時に支払うことを求めたが、即時には支払えない旨被告が申し述べたため、被告が本件撮影行為を行った携帯電話を原告が預かることとして、以下の内容の本件示談書(甲1)の甲・乙の氏名以外の部分をパソコンで作成し、被告に署名指印させた。
「乙(Y)は甲(X1合同会社)に対し、乙が甲の店舗内において甲の従業員の接客中に不正行為を行ったことを認め、謝罪する。
乙は甲に対し、慰謝料、迷惑料として規定通り金100万円を、内金20万円を平成27年7月10日15時を期限、残金80万円を平成27年7月20日15時を期限として、2分割して、支払う。乙は、甲と、いかなる理由があろうと、今後一切、接触してはならない。」
キ 本件示談書作成の際、原告代表者は、被告に対し、原告名義の通帳の表紙をコピーした紙に、「私 Yは平成27年7月9日B店内において不成(ママ)したことをみとめ金100万円を上記こうざに支払うことをやくそくします。7月9日 Y」と記載させ、指印をさせた。
ク 同月9日午後11時30分ころ、被告は原告代表者に上記携帯電話を預けて、帰宅を許された。
同月10日昼ころ、被告は本件店舗を訪れて20万円を支払った際に、原告代表者から上記携帯電話を返された。
(2) 原告代表者の供述について
ア これに対し、原告代表者は、陳述書(甲19)及び原告代表者尋問において大要以下のとおり供述する。
本件サービス時、本件店舗の入り口や同店舗内の壁に数カ所注意事項が掲示してあり(甲4ないし9(枝番を含む。))、盗撮時には罰金100万円が発生することを全ての客に事前に説明していた。
被告の盗撮が発覚した後、原告代表者は、本件スペースにおいて、被告が事前に不正時の対応も説明している旨再度説明し、被告にどのように対応するかを質問したところ、被告は、自分から、一括で100万円を用意することはできない、支払を20万円と80万円の2回に分けてほしいと求めてきた。被告が、示談金内金の支払を翌10日にしてくれと求めてきたが、自分が被告をあまり信用できないと伝えると、被告が自らの荷物を置いていくので翌日支払にしてほしいと再度求めてきた。そこで、被告を信用し、不正に使用した携帯電話を預かり、支払を翌日にする約束をした。
翌10日、被告が約束通り示談金の一部を持参したので、預かっていた携帯電話を返却し、盗撮時の映像も消去した。
イ しかし、原告代表者の上記各供述については、原告提出の甲号証のうち、本件訴え提起時に提出していた各写真においては本件店舗に係る掲示に100万円の記載がなく(甲3の1・2、記録上顕著な事実)、本件訴え提起から半年以上を経た平成28年2月9日に当裁判所に提出された各写真(甲4ないし9)には、本件店舗内外の掲示に迷惑料を100万円とする記載がされていることからすれば、本件訴え後に作出された証拠である可能性がある(このことは、本件訴え当初から原告が提出していた甲3の1の掲示場所について、原告代表者があいまいな供述をしていることからもうかがわれる。)。
本件示談書に係る迷惑料の掲示は、原告主張の経緯によれば、被告が本件示談書を作成した動機として重大なものであるところ、上記のとおり、迷惑料に係る掲示については原告が本件訴え提起後に証拠を作出した可能性があることに加え、〈1〉原告代表者は、その尋問において、本件示談書を被告が作成した当時の状況についてあいまいな供述をしていること(被告とのやりとりについてはどうやって払ってもらえるか聞いたと思うが、記憶は正直なところない、上記(1)キのような記載を被告にさせた理由も記憶はなく、特に理由はないと思うなどと述べるにとどまっている。)、〈2〉本件撮影行為を行った携帯電話を被告に対して返却しなかった理由について、陳述書の内容と原告代表者尋問における供述内容が一貫しておらず、また、合理的な説明がされていないことを併せ考えると、本件示談書作成前後の状況に関する原告代表者の供述の信用性は低いものと言わざるを得ず、採用できない。
ウ 他方、被告の本件サービス提供から本件示談書作成前後の経過に関する供述は概ね一貫しており、特段不自然、不合理な点は認められず(被告が陳述書(乙3)において本件スペースを「事務室に閉じ込められた」と述べている点については、同陳述書においてその詳細を述べておらず、被告本人尋問における本件スペースに係る供述内容は原告代表者の陳述内容と概ね合致していることに照らして、不合理な変遷とまではいえない。)、大要、その供述は信用できるものと認められる。
エ したがって、当該供述等により上記(1)のとおり認定することができ、本件全証拠を精査しても上記認定を覆すに足りる適確な証拠はないから、原告の主張に理由はない。
2 強迫行為による取消し(第2の2(2))について
上記1(2)の認定事実によれば、原告代表者は、本件店舗閉店後である午後11時30分ころまで、容易に外に出られない本件スペースに被告を留まらせ、携帯電話等の所持品を原告が預かった状況下で、本件撮影行為に関して執拗に100万円の賠償を求め、20万円の即時支払を求めたり、本件示談書のほかに上記1(1)キのとおり支払を約させるなどもし、このままでは帰宅することもできないと恐怖の念を被告に感じさせて本件示談書を作成させたものと認められるから、原告の行為は、民法96条1項の「強迫」に当たるというべきである。
そして、被告が、原告に対し、平成27年12月3日の本件第3回口頭弁論期日において、本件合意を強迫により取り消す旨の意思表示をしたことは記録上顕著であるから、被告の主張は理由がある。
3 不当利得の成否(第2の2(4))について
上記2のとおり、本件合意は民法96条1項により取消しがされたものである(なお、上記1(1)の認定事実のとおり、迷惑料の具体的な金額の定めが本件サービス前に示されていたものとは認められないから、損害賠償の予定について原告被告間に意思表示の合致があったものということもできない。)。
したがって、被告が原告に対し平成27年7月10日に支払った20万円は、法律上の原因のない給付であり、原告が不当に利得したものといえる(民法704条)。
そして、上記2のとおり認められる原告代表者の行為態様によれば、原告は上記20万円の利得につき、支払日翌日から悪意の受益者に当たる。
第4 結論
以上によれば、原告の本訴請求は理由がなく、被告の反訴請求は理由がある。

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