風俗店,とりわけデリヘルの経営者や店長さんからの相談として,本番トラブルと盗撮トラブルに関する相談は非常に多い。
女性キャストが客から本番行為を強要された。
本番強要をされて警察を呼ぼうと思うがどうしたらいいか。
本番強要をした客が逃げてしまった。
などの相談を多く受ける。
今回は,風俗店での本番強要があった場合に客が逮捕されるのか?
刑事事件化されるのか?
警察は動いてくれるのか?
について,過去の事例に照らしつつ,検討していこう。
なお,風俗トラブルのもう一方,盗撮トラブルと逮捕・刑事事件については以下のページを参照されたい。
皆さんご存知のとおり,デリヘル等の風俗店では,本番行為は禁止されている。
お店の規則として禁止されているのはもちろんのこと,デリヘル等の風俗での本番行為は売春にあたるため,売春防止法でも禁止されている。風俗店が女性キャストに本番(売春)をさせていたとしたら,管理売春や売春場所の提供,売春させる契約をした,売春の周旋をしたなどとして,風俗店経営者側が逮捕されてしまう可能性がある。
このように,本番が禁止されているデリヘル等の風俗店において,客が女性キャストの意思に反して無理やり本番を強要したとなれば,それは,強姦に該当する。
現在は,刑法が改正され,強姦罪ではなく強制性交等罪が適用されることになる。
強制性交等罪は,強姦罪と異なり,非親告罪(告訴がなくても起訴できる)である。
また,強制性交等罪は,5年以上の有期懲役という重い刑罰が定められている。これは,減刑されなければ執行猶予をつけることができないほど重い罪だ。
その際に女性キャストが怪我をした場合などは,強制性交等致傷罪が適用される可能性があり,この場合は,無期又は6年以上の有期懲役という重い罪となる。
(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。(強制わいせつ等致死傷)
第百八十一条 2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
デリヘル等の風俗店経営者の方からの相談で,女の子が本番強要をされ,警察に被害相談したが警察が動いてくれなかった。被害届を受理してくれなかったなどの相談を受けることがある。
では,実際に,風俗での本番で警察が動き,客が逮捕されることはあるのだろうか?
数としては多くはないが,逮捕された例はある。
当法律事務所での経験からすると,どういうわけか,東京や大阪,名古屋といった大都市よりも地方で本番トラブルのケースの方が警察が動くケースが多いように思える。
ただ,東京での本番トラブルでも警察が動き,実際に風俗店の客が逮捕された事例はある。
過去の例からすると,警察に動いてもらい,本番強要客を逮捕してもらうためには,しっかりと証拠を確保すること,本番強要被害を受けた直後から素早く行動すること,警察に被害感情や処罰感情が強いことをきっちり伝えることが重要だ。
前述のように,本番強要の被害を受けた場合には,その初動が重要となる。
証拠が消えないうちに証拠をしっかりと保存しておこう。
本番強要の証拠としては,以下のものが考えられる。
上記のような証拠を確保するためにも,早期に適切な対応を取る必要がある。
その上で,すぐに警察に連絡をして,被害状況をしっかりと伝えていくことが重要だ。
俳優の新井浩文氏がメンズエステで本番強要をしたとして逮捕された事件の判決が出た。
新井氏は強制性交罪の成立を否定し,無罪を主張していた。
裁判所は,この無罪主張を認めず,有罪判決を言い渡した。
懲役5年の実刑判決,執行猶予はつかなかった。
この判決では,なぜ有罪となったのか?執行猶予がつかなかった理由は?
本番強要被害にあってしまった場合にこの判決から参考にすべきことは?
以下の記事で詳しく解説したので参照してほしい。
その他の風俗トラブルについては以下の記事にまとめたので,参照してほしい。